備長炭・串本の塩・南高梅、オール紀州が生み出す極上の干物
紀州備長炭干し 備長梅左衛門 真あじ
魚の干物といえば、海辺で干され、陽にあたり風に吹かれて美味しくなっていく。そんなイメージが強いのではないでしょうか。ところがこの『紀州備長炭干し 備長梅左衛門 真あじ』は、太陽にも風にも触れることなく、作業場の中でひっそりと“干されて”いきます。
いったいどういうことでしょう?
陽に干さないことで魚の劣化を防ぐ
「天日干しには天日干しの良さがあるんですが、やはり空気や太陽にあたることで、どうしても魚は劣化してしまいます」そう語るのは創業70年、株式会社紀州高下水産の若き三代目店主・高下昭人(あきと)さん。
実は魚の干物には昔から「灰干し」という、陽に当てない製法があります。もともと株式会社紀州高下水産では灰干しが売り物だったのですが、現店主が「灰ではなく地元の紀州備長炭を使ってみては」と5~6年前から始めたもの。今では、株式会社紀州高下水産の干物は、すべて「紀州備長炭干し」に切り替わっています。
まずパレットにチップ状に砕いた備長炭を敷き、紙を敷きます。その上に塩水漬けにしておいた魚を天然パルプの特殊セロファンと不織布で包み、その上にもう一度備長炭チップを敷き詰めます。つまり魚を備長炭でサンドイッチ状態に。このまま平均5~6時間、室内で魚は“干され”、旨味を増していきます。
パレットに備長炭チップが敷かれ、次々に魚を炭でサンドイッチにしていきます。
魚の旨味を高める備長炭の吸湿・消臭作用
陽にあてることなく魚の水分が吸い取られていくのは、炭の吸湿効果のおかげ。さらに脱臭効果で臭みも同時に取り除きます。
通常この種の水産加工場は、独特の魚臭さが充満しているものですが、株式会社紀州高下水産の作業場は驚くほど臭いがありません。備長炭の威力をまざまざと感じるところです。
魚を塩水につける際は、和歌山県南端・串本の海で作られた塩を使用。そして「梅左衛門」の名が示すように、南高梅の梅酢も加えられ、干物の仕上がりをまろやかでコクのあるものにしています。
串本の塩、南高梅、紀州備長炭、そこに加わる店主の技。オール紀州でつくられた『紀州備長炭干し 備長梅左衛門 真あじ』のふっくらとした焼き上がり、旨味の秘密は、ここにあります。
(2015年11月取材)
株式会社 紀州高下水産
34歳の三代目店主・高下昭人さん。
父から受けついた「灰干し」の伝統を、「紀州備長炭干し」と進化させました。