醤油の旨味がギュッとつまった新感覚の調味料!
諸味ペースト 醤(ひしお)
和歌山県の北西部にある港町・湯浅町は、醤油発祥の地。鎌倉時代、中国から伝えられた味噌をもとに、この地で日本で初めて醤油が作られました。今でも湯浅は醤油づくりが盛んで、町に降り立つと香ばしい匂いが漂ってきます。
この醤油の故郷・湯浅で生まれたのが『諸味(もろみ)ペースト 醤(ひしお)』。平成26年度推奨品審査委員奨励賞を受賞しています。さて、「諸味ペースト」とはいかなるものでしょう?
使い方はアイデア次第の“塗れる醤油”
諸味とは、大豆や小麦、麹に塩水を加え、発酵・熟成させたもの。これを絞った液体が、日頃、私たちが醤油として利用しているものです。『諸味ペースト 醤』は、この諸味を絞らずに独自の製法で濾過。滑らかなペースト状に仕上げられています。醤油の旨味成分がギュッとつまった、新感覚の調味料と言えるでしょう。
開発したのは湯浅でも老舗で知られる醤油メーカー・株式会社角長(かどちょう)の営業部長、加納恒儀(つねのり)さん。この新商品はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。
「5年ほど前に、醤油の売り込みでフランスに行ったんですが、そこで現地の人たちが、ジュレみたいなものを野菜や肉につけて食べていたんです。それを見て、塗れる醤油があったら面白いんじゃないかと思いまして」
使い方は様々ですが、最初は醤油を使う場面で使ってみるといいでしょう。お刺身や冷奴にちょっと載せたり、納豆に入れると醤油とはまた違った味わいが楽しめます。ほかにも箸先にちょっとつけて味噌汁に入れると、コクが出て奥行きのある味に。野菜スティックなどのディップソースに混ぜてもOK。アイデア次第で使い方はまだまだ広がりそうです。
ちなみに加納さんのお勧めは、塩コショウせずに焼いたステーキに塗るというもの。さっそく試してみましたが、確かにこれはイケます!
なお、『諸味ペースト 醤』の素材となるのは、三年以上熟成された諸味だけ。角長の最高級醤油、『匠(たくみ)』と同じものが使われています。その深い旨味に納得です。
極上の諸味は蔵がつくる
さて、醤油発祥の地・湯浅のなかでも、角長は屈指の老舗。創業天保12年(1841年)ですから、170年以上も醤油をつくり続けています。さらに驚くべきは創業当時の蔵が、少しずつ補修されながらも、今も現役で使われていること。また仕込みに使われている日吉杉の大樽も、当時のままです。
江戸時代から使われ続けている蔵。壁や梁の染みの一つ一つが角長の財産です。
実はこの古さは醤油蔵にとって大きな意味があります。蔵の内部の天井や壁、梁、そして使われ続けている樽。そこここに“蔵付き酵母”が棲みついて諸味に作用し、角長の醤油の大切な個性となっているのです。
戦災をまぬがれたため、湯浅には古い町並みがそのまま残っています。
角長では醤油博物館も運営しており、観光客が多く訪れています。
角長の七代目となる加納さんに、蔵の伝統をどういう時に感じますか? と尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「やっぱり醤油って、人間じゃなくて、蔵がつくるってとこですかね」
伝統の蔵と技が生み出した、新感覚の調味料。面白いと思いませんか?
(2015年11月取材)
株式会社 角長
角長七代目の加納恒儀さん。
今も手作業で諸味を育てています。夏場の温度管理には特に気を使うとのこと。