近大独自の養殖技術と、和歌山の清流が作り出す「近大キャビア」
淡水魚であるチョウザメの卵を塩漬けにした高級食材で、世界三大珍味の一つとして数えられるキャビア。和歌山県が誇る豊かな自然環境の中から生み出される、宝石のようなキャビアは、新鮮で旨味の詰まった深い味わい。近畿大学水産研究所新宮実験場では、チョウザメの研究を積み重ね、“日本のキャビア”と言えば、「近大キャビア」と呼ばれる逸品を目指した商品展開を進めている。
熊野山麓の澄んだ水が育むチョウザメ
近畿大学水産研究所新宮実験場が開設されたのは、1974年。サケやマスなど、淡水魚の研究施設としてスタートしました。日本では、1980年代頃からチョウザメの養殖生産が盛んになりはじめ、1995年、同実験場でもチョウザメの研究に着手。研究の一環として、2008年に「近大キャビア」の販売を開始しました。
キャビアを採るチョウザメは、熊野の山麓から流れる高田川の澄んだ水を引いた水槽で飼育。高田川の水の美しさの秘密は、マグマがせりあがってできたとされる地質にあります。山を形成する花崗岩が崩れて小さな礫(小さな石のこと)となり、それが常に川に流入し堆積していくことによって自然のフィルターが生まれ、水を浄化しているのです。上流に民家がないことも、清流が保たれている理由の一つ。新宮市高田は、チョウザメの育成・研究に取り組む上で、非常に恵まれた環境であると言えます。
使うのは、魚卵と岩塩のみ
現在飼育されているチョウザメは、250匹ほど。オオチョウザメとコチョウザメの人工交配種であるベステルという品種のチョウザメです。3歳程度まで育つとオスかメスかの判別をして、オスは魚肉として出荷、メスだけを残します。抱卵しているかどうかは、エコーや生体組織採取検査で見極めます。大きい個体だと1匹から3~4㎏の卵が取れます。個体差の大きいベステルの卵には、黒や茶、グレーと言った色の違いが現れ、味も個性に富んでいます。
近大キャビアは、魚卵と岩塩のみを使用。採取した魚卵を一晩塩漬けし、その後すぐさま冷凍します。通常海外で流通しているキャビアは、菌の増殖を防ぐ観点から塩分濃度を高くしており、さらに防腐剤の添加や低温加熱殺菌を行っています。日本では、塩漬けしてすぐ冷凍する”浅漬け”が日本のキャビアのスタイルの一つとして確立されています。これは従来のキャビアスタイルとは異なり、塩分濃度は低くしており、防腐剤の使用をしていません。
海外ではスタージョン・ロウとも呼ばれる浅漬けのキャビアは、キャビアらしい風味とフレッシュな味わいが楽しめるという特徴があります。さらに、冷凍加工により長期的な保存も実現しました。
安全性を第一に考えた加工工程
生ものを扱うということで、加工工程には細心の注意を払っています。チョウザメ1匹の解体は3人がかりで行い、卵を取り出す際にはチョウザメの体表を触ったスタッフは、決して卵に触らないといった雑菌を出さないような心掛けも徹底。パッケージングは、加工専用のクリーンルームで安全第一に行っています。
キャビアを入れる容器は瓶を使用していましたが、2018年に缶に変更し、パッケージも一新。長い年月をかけて作るキャビアの貴重さを表す、高級感のあるデザインになりました。ラベルにもこだわり、凍り付いた冬の湖をイメージを落とし込みました。そして、“近大ブランド”の商品には必ず付いている、“近大卒のキャビア”を証明する卒業証書も添えています。
近大キャビアを“日本のキャビア”に
近大キャビアをご購入いただいた方から、「結婚記念日にお取り寄せして食べました」などメッセージをいただくことも。長い期間をかけ、こだわりを持って作り上げる私たちのキャビアが、お祝いの場で楽しんでいただけることはとても嬉しいです。2018年からは、数カ月の長期熟成に成功し、さらにコクとうま味が深まった「近大キャビア プレミアム」も販売しており、好みやシーンに合わせて、たくさんの方に味わっていただいています。
高級食材として有名なカスピ海産のキャビアが採れるチョウザメは、乱獲が進んで絶滅が危惧されている状態。そのため養殖キャビアは、世界各国で注目されている産業分野でもあります。今後も、近大キャビアを“日本のキャビア”として多くの方に親しんでいただけるよう、価格、味、安全性、さまざまな面で皆さまに選んでいただきやすいキャビアを目指していきたいと考えています。
株式会社 アーマリン近大製造所:近畿大学水産研究所 新宮実験場
稻野 俊直さん(近畿大学水産研究所新宮実験場長・准教授)
近大キャビアは近畿大学水産研究所の新宮実験場で製造し、株式会社アーマリン近大で販売している。70年以上の歴史を持つ近畿大学水産研究所と”大学発”ベンチャー企業が連携することで研究成果を社会に広く提供している。
独自の養殖技術による「卵から成魚までの一貫した管理体制」のもと、安全・安心・美味しさの追求にこだわった良質の魚を育てて販売。水産研究所本部、アーマリン近大本社いずれも和歌山県に置き、地域の水産養殖業の発展に寄与している。
県内は、新宮市、白浜町、すさみ町、串本町、那智勝浦町、由良町に水産研究所、アーマリン近大の研究・生産施設がある。
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