残間 では早速、乾杯とまいりましょうか。本日の乾杯酒は『勹果(ほうか)紀州南高梅白スパークリング』です。こちらはフルーツリキュールでして、南高梅果汁と白ワインをブレンドしています。その名の通り紀州南高梅の香りをお楽しみください。では知事、乾杯のご発声をお願いします。
知事
この座談会を今年も楽しみにしていました。
皆さんの健康を祝して乾杯!
一同 乾杯!
残間 荻野さんお味はいかがですか?
荻野 もちろん、うめーっ!
弘兼 (笑)言うと思いました。実はこれ、最近飲みました。アルコール分が低いせいか、口当たりが良くてひと瓶一気に飲んじゃいましたね。
残間 お酒で喉が潤い、恒例の荻野さんの駄洒落も飛び出したところで、まず一の膳です。
仁坂 吉伸(にさか よしのぶ)
和歌山県知事
和歌山県出身。経済産業省を経て
2006年より現職。
残間 里江子(ざんま りえこ)
プロデューサー/
プレミア和歌山推奨品審査委員会委員長
「大人から幸せになろう」など、
文化イベント等を多数企画・開催。
新しい「日本の大人像」の創出を目指す
会員制ネットワーク「クラブ・ウィルビー」を主宰。
鮪の希少部位の旨さに誰もが納得
新発想の南高梅にはサプライズ!
残間 『希少部位 本まぐろの頭肉/カマトロ/頬肉』の御造りからいきましょうか。こちらは鮪一体からわずかしか取れない希少な部位を、一度に三種類楽しめるという商品です。串本町で養殖したまぐろを水揚げした港に近接した工場ですぐさま加工し急速冷凍。さらに超低温保存で鮮度を保っています。令和3年度審査委員奨励賞を受賞した商品です。なかなか関東では手に入らないのではないでしょうか。
弘兼 魚の頭肉と頬肉はたいてい旨いんだけど、まぐろもやっぱり旨い。カマトロも脂がのっていいですね。
荻野 これはもう、美味しくて唸っちゃいますよ。「頬(ホホーッ)!」
山本 本当に美味しいまぐろでした。ごまかしようがない食材ですよね。こういうものを生み出せる土地なんですね、和歌山というところは。
荻野 アンナ(おぎの あんな)
作家
パリ第4大学に留学、ラブレーを研究。
帰国後、研究のかたわら執筆活動を始め、
『背負い水』で芥川賞受賞。
温泉、旅好きで、エッセイにも定評がある。
残間 面白いのが『紀州梅まぐろ梅』です。ちょっと食べてみてください。
弘兼 なるほど。これは珍しい! 一見、普通の梅干しなんですが、サプライズの楽しさがありますね。
残間 そうです。紀州南高梅の種を取って、その中に甘酢味噌で味付けしたまぐろのほぐし身がつめられていて新感覚ですね。一つ一つ職人が丁寧に手作りしているそうです。和歌山の生産者は特産品である南高梅で何か新しいもの作ろうと、様々なチャレンジをしています。これは審査会でも特に好評でした。令和3年度審査委員奨励賞を受賞しています。
荻野 梅干しだけだと酒の肴にならないんですが、これは完璧なお酒のお供ですね。
泉 おにぎりに入れるといいんじゃないですか。和歌山のコンビニ限定商品とか。
鈴木 この商品名『紀州梅まぐろ梅』って、“まぐろ”を“梅”が挟んでるイメージなんですね。
残間 そう聞いてます。
鈴木 やっぱり! 最初は梅を一口、次にまぐろを一口、さらに一緒にと、いろいろな食べ方もできる。酒のつまみにもご飯のおかずにもいいですね。お湯をかければお茶漬けにもなりそう。
鈴木 光司(すずき こうじ)
作家
1990年『楽園』
(日本ファンタジーノベル大賞優秀賞)で
デビュー。
『リング』『らせん』シリーズが
計800 万部のベストセラーとなり、
ハリウッドでも映画化。
残間 あとの2品もどうぞ召し上がってください。『原(はら)こん』はこんにゃく粉を一切使っていない正に本物のこんにゃくでして、『原(はら)こん』の名の由来は、日高町の原谷で作られたこんにゃくが大変おいしかったものだから、地域の人々の間に「原谷で作ったこんにゃく」として徐々に親しまれていったことから、その名で売られています。
荻野 この弾力、歯が喜んでますね。噛み締めるほどに滋味を感じます。
残間 それから和歌山では定番の『早なれ寿司』。秋祭りの時によく食べられる郷土料理です。香りの高いあせ笹の葉でくるんでいまして、“早なれ”は少しだけ発酵させていることを意味します。
知事 あせ笹というのは、「ダンチク」とも呼ばれるものなんですが、和歌山の海岸にたくさん生えているんです。もう邪魔なくらい。
幸田 笹の香りがとっても良くて、鯖が苦手な人にもいいかもしれませんね。さわやかです。
荻野 香りがしみこんだご飯が美味しい。
鈴木 これはご飯がたっぷり入っていて、ランチにいいですね。ご飯一杯分くらいありそう。
幸田 ご飯はボリュームがあるので、一口サイズにお箸で割りやすくするために、たとえばご飯の上に少し切り込みを入れたりすると、もっと食べやすくなりそうですね。
鈴木 僕は柿の葉寿司も好きなんだけど、あれはちょっと小さい。これならお腹も満足。和歌山でラーメンを食べると、よく早なれ寿司がついてきますが、あれは小さいですよね。
知事 あんな小さいのは昔はなかったですよ。私が小さい頃に食べてたのは、これくらいありましたね。それも、もっと熟(な)れた強烈なやつでした。
弘兼 滋賀県の鮒寿司みたいに発酵したやつですね。
蔵付き酵母菌が醸す伝統の味
金山寺味噌としては初の特別賞を受賞
残間
二の膳でまずご紹介したいのが、太田久助吟製の『金山寺味噌』です。和歌山は金山寺味噌づくりが盛んですが、中でもこの商品は令和3年度審査委員特別賞、事実上の最高賞を受賞しています。
太田久助吟製は150年続いている湯浅町の味噌蔵でして、現当主の六代目は蔵のお嬢さんと結婚していたんですが、ずっと小売業でサラリーマンをやっていた方です。先代が高齢となり人手もないので廃業しようかとなった時、そのお婿さんも湯浅出身なものですから天保の昔から続く蔵のことはよく知っていたんですね。あの蔵をつぶすのはあまりにも惜しいと、38歳にして味噌作りの道に入った異色の経歴の持ち主です。先日、弘兼さんと一緒に蔵にお邪魔しましたが、立派な蔵でしたよね。
弘兼 天保時代に建てられただけあって、さすがに雰囲気ありましたね。
残間 150年蔵に住み続けている蔵付き酵母に守られて熟成していくそうです。それからここの金山寺味噌の特徴のひとつは、具材の野菜が大ぶりなことですね。
弘兼 僕は蔵でいただきましたけど、これはご飯のおかずにも酒のつまみにもいいんですよね。
知事 実は私、いまダイエットしてまして、お昼ご飯は毎日生キャベツとこの金山寺味噌です。
幸田 私、金山寺味噌が大好きなんですけど、これは胡瓜とか添えなくても、これだけで美味しいです。しょっぱ過ぎず優しい味ですね。
残間 先代が「背中を見て覚えろ」的な方だったそうで、今の六代目はかなり苦労して、この味にたどり着いたようです。当主夫婦とお姑さんの3人で作っています。
山本 僕も金山寺味噌が大好きで、都内の味噌屋によく買いに行くんですけど、これはまるで違いますね。別物だな。
山本 一力(やまもと いちりき)
作家
通信機輸出会社、旅行会社、
広告制作会社など経て、
1997年『蒼龍』で
オール讀物新人賞受賞してデビュー。
2002年『あかね空』で直木賞受賞。
残間 お肉系は3品ご用意しました。最初は『紀州和華牛生ハンバーグ』ですね。こちらは令和2年度の審査委員特別賞を受賞した紀州和華牛を100%使ったハンバーグです。紀州和華牛は過度のサシを抑えた赤身の美味さが魅力です。生で冷凍してありますので、解凍してご自分で焼いていただきます。
泉 赤身の美味さとおっしゃいましたが、確かにコシがあるというかステーキ感がありますね。かみごたえがあります。今日は和風おろしソースがかかってますが、ハンバーガーにしても良さそうですね。
泉 麻人(いずみ あさと)
コラムニスト
慶應義塾大学卒業後、
編集者を経てコラムニストに。
『銀ぶら百年』『東京23区外さんぽ』など
東京や時代風俗に関する著作を
多く著す。
各地の食文化も詳しい。
残間 『紀の国みかんどりケバブ オーロラ味』はいかがでしょうか。みかんの皮を使用した飼料で育った“みかんどり”という鶏が和歌山にあるんですが、そのお肉をケバブにしたもので、今回お出ししているのはケバブではポピュラーなオーロラ味のものです。商品開発に際しては、ケバブの本場のトルコで研究し、国内のケバブ職人の方に指導を受けてみかんどりに合うよう味付けされたそうです。
知事 みかんどりの前に“うめどり”というのがありまして、飼料に梅エキスを加えたら鶏がやたらと元気になりました。だったら和歌山だからみかんでもいけるのでは? というので試してみたら、やはり元気な鶏に育ったということです。
幸田 スパイシーですごく美味しい。クミンが効いてるみたい。
残間 肉系の最後は『熊野牛ハヤシソース』です。熊野牛は、十分な霜降りと、肉の繊維が細いことから触感が柔らかいのが特徴です。本日はサフランライスを添えています。
泉 地名と食べ物の相性ってあるじゃないですか? たとえば「和歌山ラーメン」とか、上に付く地名が馴染んでいる。「熊野牛ハヤシソース」も熊野の森のイメージがハヤシ(林)を連想させていい。もちろん、実際おいしいですね。
残間 そしてこの膳では飲料として『ブルーウッドブリュワリー セッションIPA』をご用意しています。こちらはクラフトビールで、ホップを通常の3倍量使用して、柑橘系のホップ、地元の八朔のピールで風味づけをしています。八朔ピールのおかげで、通常のクラフトビールに比べるとキレのある軽快な味わいが特徴です。
鈴木 八朔の酸味が効いていてとてもいい。こんな贅沢な味のビールを毎日飲めたら、人生、ハッピーになるね。
試食会の締めは美味しさとヘルシーさを兼ね備えた
優れものスイーツで
残間 最後はデザートです。令和3年度審査委員奨励賞を受賞した『いちじくプリンセス』からいきましょう。こちらを生産している紀の川市のロハス農園にも、弘兼さんと先日行ってまいりました。樹上完熟した傷のないものを厳選して朝採りし、正午には消費者に向けて出荷しています。完熟したいちじくは甘くて美味しいんですが、傷みやすいんですね。そのためにフワフワのクッションのような梱包材を使うなど、工夫を凝らしています。
弘兼 現地の方は皮ごと食べてました。というか、完熟のものって皮も食べられるんですね。
幸田 甘い! いちじくは大人になって好きになりました。普段は生ハムと一緒にいただきますが、この商品は単独で美味しいですね。プリンセスという名の通り、大事に大事に育てられているんでしょうね。
残間 「いちじくが我が子のように愛おしい」と生産者の女性が仰ってましたね。その女性の実家が農園だったんですが、最初は家業を継ぐつもりはなかったようです。ところがサラリーマンだった結婚相手が畑をやりたいと言い出して、夫婦で農園をやっているうちにいちじく栽培にのめり込んでしまったとのことでした。さっきの金山寺味噌といい、家業の存続にはお婿さんって大事なんですね。
山本 確かに!
残間 以前は完熟前に出荷していたそうですが、一番美味しい状態で食べて欲しいという生産者の一念で実現した商品ですね。
弘兼 憲史(ひろかね けんし)
漫画家
松下電器産業に勤務の後、
1974年漫画家デビュー。
代表作は『島耕作』シリーズ、
『人間交差点』『黄昏流星群』など。
2007年には紫綬褒章を受章。
残間 『紀の香ジャム』は、和歌山県のブランドいちご“紀の香”と砂糖、レモン果汁のみで作ったジャムです。こちらもどうぞ。
知事 “紀の香”はヒットした“まりひめ”に続く、和歌山県が品種改良したいちごです。
幸田 どんな特徴があるんですか?
知事 実が大きくて甘く、そしてちょっと酸っぱい。このちょっと酸っぱいのが大事なんです。
幸田 そこ大事ですよね。最近の果物は糖度の競争になっていますけど、酸味とのバランスが重要だと思うんです。
鈴木 それわかるなあ。僕、果物屋に行って「酸っぱいりんごください」って言ったら、店の人に「そんなものを買いたがる人は初めてだ」って言われました。僕は子供の頃からりんごというのは酸っぱいものだと思ってたんですけどね。さびしいなあ。
幸田 私はアップルパイを焼くのが好きなんですが、やっぱり紅玉で作るのが一番美味しいんですよ。ところが最近はあまり売ってないんです。あっても結構高い。行き過ぎた糖度競争はやめて欲しいですね。
幸田 真音(こうだ まいん)
作家
米国系銀行や証券会社で
ディーラーなどを経て、
1995年『小説ヘッジファンド』で作家に。
主な著書に
『日本国債』『凛冽の宙』『日銀券』ほか多数。
『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』で
新田次郎文学賞受賞。
残間 続きまして『紀州わかやま 和-nagomi-菓子 しょうがれっと。』です。生姜を味付けに使っている、米粉で作ったクッキーです。和歌山県は日本でも有数の生姜の産地ですね。小麦後、卵、白砂糖は不使用。蜂蜜以外の動物性食材も使っていないせいか、独特な食感になっています。
幸田 これは美味しい。生姜の香りがすごく効いてますね。
残間 アレルギーのある方には特にいいんじゃないでしょうか。こうしたアレルギー対策にもなる商品は昔は味がいまひとつだったんですが、生産者の方たちも研究しているようで、かなり良くなってきています。
荻野 しょうがの味を自然な甘みが引き立ててますね。これは“ジンジャー仏閣”にそなえたい!
鈴木 (笑)もう無理やりだな。
残間 『串本なんたんジオバウム』は串本町の特産のさつまいも「なんたん蜜姫」を練り込んだバームクーヘンです。ジオバウムの「ジオ」ですが、串本町が南紀熊野ジオパーク(日本ジオパーク委員会認定)のエリア内にあることから、ジオパークを盛り上げようと作られたお菓子です。
泉 ほう、これは柔らかさと、さつまいもの優しい味わいがいいですね。
残間 最後は『わかやまスムージー キウイフルーツ&ほうれん草』です。もちろん和歌山県産のキウイと国産ほうれん草を使っています。
幸田 体に良さそう。でも色の割にはほうれん草をあまり感じませんね。飲みやすくて美味しいです。
弘兼 確かに青臭くないですね。この手のものって、体のために青臭さを我慢して飲むようなところがありますが、シンプルに旨いです。
残間 さて、本日の試食会はこれにてお開きとなりますが、山本一力さん、全体の感想を一言お願いします。
山本 やっぱり食品というのは素材が良くないと、どうやっても違っていくなと感じましたね。今日食べていて、そんな考えにたどり着いてしまいました。ここにある加工品も生鮮品も、ほとんどの素材が和歌山の中にあるわけですけど、こういうものを生み出せる土地なんですね。地力があるわけですから、素材の良さを生かして、これからも素晴らしい商品を作ってもらいたいものです。
知事
ありがとうございます。そう言っていただけると自信が湧いてきます。パートナーの皆さん、今日はおつきあいいただき感謝申し上げます。今後とも和歌山県産品、プレミア和歌山をよろしくお願いします。